天皇即位に向けての学校関係者総動員体制

日本にいる大学教員仲間からの、そういえば10月22日はどこの大学も授業がない、普段は祝日に山ほど授業を入れてくるくせに、という呟きで気づいた問題についてまとめておきます。

ハッピーマンデーなる迷惑な法律ができたおかげで、大学の時間割は曜日ごとの授業数に偏りが発生し、それを解消するために国民の祝日を無視して授業を開講するということが普通に行われてきています。そういう変則的な授業日程について説明すると、学生たちは「ということは、我々は国民扱いされていないってことですね?」と皮肉を言ったりしています。

それなのに、即位の礼の日は別格扱いで、全国どの大学も授業を入れないというのは、実に不自然でキモチワルイほどの同調振り、なんだかヘンだなという素朴な印象から始まり、もしや振替授業が入っていないのは、文科省から強い指導と要請が入った結果なのか?あるいは、そういう指導がなくても各大学が忖度自粛して外しているのか、後者だとしたらかなり深刻な問題だ、などとあれこれ考えていたところ、少し調べてみたら、やはり中央からの強力な指導が入っていたということがわかりました。

【追記】
この記事を読んでくださった方から、文科からの指示もどこ吹く風、筋を通して10月22日にも普通に授業を行なう予定の大学があるということを教わりました。気骨のある大学も、少数ながら残っていることを知り、少し勇気をいただきました。変な攻撃を受けないよう、大学名は伏せておきます。

ちょうど4月は在外研究に伴う出国や引っ越しなどでバタバタしていて見逃していたのかもしれませんが、あまり騒がれたという記憶もありません。諦めムードが漂っていたのでしょうか。

普段から天皇制や沖縄問題などについて鋭い論考を掲載している「アリの一言」というブログでも、この記事が掲載されたのは9月7日(「学校現場に押し寄せる「天皇奉祝」の波」)。4月から学校に対する圧力が強まりつつある経緯が書かれています。

このブログでも触れられていますが、4月2日に「御即位当日における祝意奉表について」という国民に対する祝意を求める閣議決定が安倍政権によって下され、それを受けて4月22日には文科から全国の学校等機関宛てに、「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について(通知)」2019年4月22日(文科省初中教育局長通知)という通達が出されました。翌日には、教育新聞がこの通知について報じています(「天皇の退位と即位への祝意 学校で理解させるよう通知」2019年4月23日)。

この通知は、背景やその精神について異様に力のこもった長文の前書きが印象的で、それだけこの通知内容に向けての文科の意気込みが感じられます。また、事務文書にしては天皇に対する敬意が不自然なまでに前面に出ていて、前書き部分では「御」のオンパレードです。このことは、昭和天皇が崩御して現天皇が即位することになったときに、1990年に同じ主旨で文部省が出した通達と比較すると明確にわかります。

このような中央省庁からの要請に呼応して、既に自治会組織や教育現場などではそれを翼賛する動きも出てきているということが、上に紹介したブログ記事でも触れられています。

憲法には天皇は国民の象徴として位置づけられていますが、ここまで力を入れて国民を祝意表敬に向けて総動員しようとするのは、憲法が規定する位置づけを逸脱していないでしょうか。また、一省庁が学校等に対して通知する事務文書で、くどいほどのへりくだりと敬語を多用するのは、暗に「天皇>官庁>国民」という上下関係を前提にしていて、民主主義を逸脱していないでしょうか。

祝意や敬意は気持ちの問題で、それを示さないからと非難されるのは間違っていると思います。この問題は、学校での日の丸・君が代の扱いに関する一連の裁判で争われたことと土台は同じだと思います。

こういうことは、ひとたびゆっくりでも転がり始めると、それを誰も止められなくなるのが日本社会の特徴ゆえに、行き過ぎないことを切に願うばかりです。

参考:天皇即位に関する学校向けの通知比較
1990年版 2019年版
即位礼正殿の儀に際しての学校における児童生徒への指導について

 即位礼正殿の儀当日の学校における祝意奉表については、平成二年一〇月一九日付け国総第五〇号で文部事務次官から通知したところでありますが、各学校においては、あらかじめ適宜な方法により、国民こぞって祝意を表することの意義を児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われますので、貴管下の学校においてもよろしく御配慮願います。
 また、都道府県教育委員会にあっては、管下の教育委員会に対し周知方よろしくお願いします。
 なお、即位礼正殿の儀当日の一一月一二日は、「即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」の制定に伴い、休日となりますので、念のため申し添えます。
天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について(通知)

 この度、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(平成 29 年法律第 63 号) (以下、本特例法という。)に基づき天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位 が行われることとなりました。本特例法では、その趣旨として、「天皇陛下が、昭和六十四年一月七日の御即位以来二十八年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、八十三歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている 天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、五十七歳となられ、これまで国事行為 の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範(昭和二十二年法律第三号)第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現する」旨定められています。
 また、本特例法を踏まえ、天皇の即位に際し、国民こぞって祝意を表するため、「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」(平成 30 年法律第99 号)(以下、本休日法という。)が制定されました。
 さらに、平成 31 年4月2日付で御即位当日における祝意奉表について閣議決定が行われ、皇太子殿下の御即位当日の学校における祝意奉表について、同日付「御即位当日における祝意奉表について(通知)」(31 受文科総第 53 号)で文部科学事務次官から通知したところです。
 各学校においては、あらかじめ適宜な方法により、本特例法に基づく天皇陛下 の御退位及び皇太子殿下の御即位について、また、御即位に際し、本休日法の趣旨を踏まえ、国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われますので、あわせてよろしく御配慮願います。
 ついては、各都道府県教育委員会教育長におかれては、所管の学校及び域内の 市町村教育委員会に対し、各指定都市教育委員会教育長におかれては所管の学校に対し、各都道府県知事及び構造改革特別区域法第 12 条第 1 項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては、所管の学校及び学校法人等に対し、各国立大学法人の長におかれては、管下の学校に対し、周知していただくようお願いいたします。
 なお、本休日法の制定に伴い、皇太子殿下の御即位当日の5月1日及び即位礼 正殿の儀当日の 10 月 22 日は休日となるとともに、同法及び国民の祝日に関す る法律(昭和 23 年法律第 178 号)に基づき4月 30 日及び5月2日も休日となりますので、念のため申し添えます。
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