Tammela学校訪問二日目

随分と間が空いてしまいましたが、市内公立普通学校での授業参観二日目のレポートです。

DSC00241二日目は、会議が入ってしまい、代替教員による授業となってしまうため、当初は見学を遠慮する予定だったのですが、後述するとおり急遽OKとなり、代替教員のILona先生による授業も含めて、1〜3時間目の授業を見学してきました。

2日目:4月17日(水)

朝から昼までの見学。この日のRiikka先生の時間割:

  1. 3年生英語(第1外国語)
  2. 3年生英語(第1外国語)続き
  3. 4年生英語(第1外国語)
  4. 空き
  5. 3年生ドイツ語(第1外国語)
  6. 3年生ドイツ語(第1外国語)続き

本来は1〜2時間目は2時間連続の授業だったのが、午前中から出張が入るため、1コマ目の3年生の英語だけ授業をして、Riikka先生はその後は市内の別所で行われる会議(研修?)へ出ることになっていました。

そのため、2時限以降は代替教員による授業となるので見学しない予定でしたが、引き継ぎに現れた代替教員がとても優秀な若手教員(というか、まだ学生。事情は後述)ということがわかり、代替の先生にも了承を得て、急遽2,3時限目も見学OKになりました。ものすごい信頼感と、臨機応変な対応に驚きました。

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1時間目後の15分休みは、子どもたちは外遊びに行かなければいけない時間なので(零下20度にならない限り教室に留まることは許されない)、静かになった教室に現れた代替教員に、進度やこなしてほしいこと、生徒の出欠などを伝達し、当日の生徒の着席位置に氏名をさっとメモした座席表を渡し、Riikka先生は学校を後にしました。この間、わずか5分程度。こんな簡単に授業を引き取り、しかも初めて入るクラスで授業をこなしてしまう代替教員って、すごすぎます。

代替教員のIlona(わかりやすいよう、ILonaと板書していました)先生は、タンペレ大学の教員養成課程の5年生。既に前年度までで代替教員としての資格は満たしたので、市の募集に応募して、学生をしながら代替教員リストに登録、病欠や研修などで代替教員が必要なときに連絡を受けて授業を担当しに来るという、代替教員をしているそうです。

英語もかなりしっかりしていて、代替教員に関していろいろ質問し

 

ても、ほとんどよどみなく、わかりやすい英語で答えてくれました。

それでは、以下、この日の1限から順に授業のレポートです。

1時限目:3年生英語(Riikka先生)

あいさつ〜紹介(10分)

冒頭の起立してのあいさつから、後ろにいる私の簡単な紹介、私への質問など、これまで参観した授業と同様の展開。ただし、英語を学習してまだ1年弱の3年生なので、母語による補足も多めで、話せる内容もまだ制約が多い。ちょうど大きな数字を学習しているところということで、年齢もご紹介(笑。ちょっと大きすぎたか。

ウォーミングアップと復習(15分)

前回までに学習した数字を全員で声に出して確認。30までを確認したが、上級学年に比べると、発音にクセのある生徒の割合は多いように感じた。逆に言えば、ここからスタートして6年生までにかなりのレベルに到達しているといえる。

フィンランド語では/th/音は存在しないので、three/thirteen/thirtyなどでは発音に課題が残る子もいる。個別に巡回しているときに、数名に対して発音のアドバイスをしていたが、全体としては特に発音について取り出しての指導はなかった。

 

数字の-teenと-tyを聞き分け、身体で反応させる。一通り教師が問題を出した後、生徒を前に出して出題させる。中には、”Eleven!”などと変化球を出す生徒も。指示などは英語が多いが、説明では母語使用の割合は上級学年に比べてかなり多く、8割くらいか。

さらに大きな数字の導入(10分)

教科書を使い、さらに大きな数字の導入。教科書準拠のデジタル教材をスクリーンに映して説明。

3年生では、thirtyとfortyを間違えたりするのがかわいく微笑ましい。上級学年ではそんな間違いはほとんどない。これも学年が進行するにつれて学習が確実に定着している証と言えるかもしれない。

 

ペアで練習(10分)

全員がほぼ新たな数字に慣れてきた頃合いを見て、ペアでの練習開始。互いに数字を言い合い、その次の数字や、逆に一つ小さい数を言うというタスク。その後、机に指で書いた数字を言い合う、いわゆる体感を伴った練習も。

途中、何のツボに入ったか、訳もなく笑い転げる生徒に対して先生が、”I’m happy that you’re happy.”と気の利いた声かけをしていたのが印象的。

ここで、子どもたちは全員外遊びへ。その間のわずかな時間に、Riikka先生から代替教員のILona先生へ引き継ぎ。当日の着席位置に生徒たちの名前をざっとメモ、特に注意が必要な生徒などの情報を説明、そしてこれまでの進度と、今日カバーすべき内容について指示。双方、実に手際よく、さらりと対応していた。

2時限目:3年生英語(ILona先生)

あいさつ〜自己紹介(10分)

ILona先生はこのクラスの代替に入るのは初めてだったようで、まずはMy name is 〜.  I like 〜.というパターンで生徒ひとりひとりとやり取りしながら自己紹介をさせながら、生徒の名前と顔を確認。

数の復習(10分)

ペアになり、互いに数字を言い合って、それを書き取るという課題。作業方法についての指示はほぼフィンランド語で行う。

生徒たちが作業に取り組む間、教室を回りモニター。途中、どうしても話をしてしまい集中を欠く生徒を、元の席に戻るように指示。

教科書の音読(3分)

教科書の練習問題にある文を、ペアになり交互に音読。フィンランド語ではWという文字は外来語や人名以外にはほとんど使われないが、”kaksois-vee”(文字通りにはdouble-v)という文字の名前の通り音価は/v/音になるため、その影響が強く出ている箇所では聞き取りにくい。

落ち着きのない生徒が、友人を伴って教室前黒板下のマットに寝転んで作業。居心地のいい場所を見つけて自由に作業することが許される環境。

リスニング(10分)

Whose 〜? 〜’sという所有格を使って、聞き取って内容について答えるリスニングの作業。

スゴロク(10分)

4人グループになり、各グループに必要なサイコロと、コマの代わりになる小さなキャラクターを配布。数にかかわる指示が出ているシートを使ってスゴロク。フィンランドの授業では、何かとサイコロを活用する課題が多く使われる。

終わりのあいさつ(2分)

最後に、この授業で学習した内容についてポイントをまとめ、それらについて自分はどれくらい理解できたか、thumb-up/downで確認。そして終了。

3時限目:4年生英語(ILona先生)

あいさつ〜宿題確認(10分)

14名のクラスで、男子は二人だけ。名前を呼び、一人一人出欠を確認。その後、宿題となっていた、家でどんなお手伝いをするかについて、グループに分かれて確認し合い、その後教師が質問を投げかけて全体で確認、共有。

教科書の読み・理解確認(10分)

家の手伝いに関する教科書の文章を読み、その内容に関するYes/Noの質問に答えて理解を確認。教師が主導して全体で答えを確認していくが、よく理解できなかった部分については挙手をして質問をする生徒も少なくなかった。

ダイヤログ練習(20分)

まず、家の手伝いに関するダイヤログを読んで理解し、ing形を用いていろいろなお手伝いについてペアで説明する。それから、ペアを組み、交代でダイヤログを音読していた。特にリピートの練習などはしていなかったが、おおむねよく読めていたので、とても初見とは思えないパフォーマンスだった。いくつかの文については、一方のパートナーが音読し、その内容をもう一方のパートナーが母語で意味を説明して確認していた。

次に、一部が穴埋めとなっているダイヤログを元に、自分の意見を考えて穴の部分に補足し、対話練習を行った。

最後に、サイコロそれぞれの目にいろいろな感情が割り当てられており、サイコロを振って出た目の感情を込めながら文を音読するという練習を行った。早く終わったペアは、ダイヤログの内容をマイムで演じるように指示が出ていた。

Simon says.(5分)

Simon saysゲームのルールに従って、指示されたお手伝いの内容をマイムで演じ、Simon saysで始まっていない場合には好きなように踊るというゲームを行った。これは、いろいろな手伝いを聞き取って理解し、身体で表現するという活動になっていた。

ゲームを終了して、授業も終わり。

授業後、ILona先生と少し雑談。

ILona先生自身は、かなり厳しめの学校を卒業したとのことで、現在のような自由な学習スタイルは自分の生徒時代にはなかったという。1980年頃以降に、フィンランドの初等中等教育も大きな変化があり、ペア・グループ活動の多用や身体で表現するなどの手法が多く用いられるようになっのかもしれない。

大学での実習については、1年次から授業の観察や批評などの機会が多くあり、とても充実して学ぶことが多かったという。新年度からは、実習を中心に、教員養成課程の観察をしていきたい。

全体的な印象

教員が研修に出やすくするために、質の良い代替教員を常に確保してあるのはうらやましいシステムです。そして、授業についてもわずかの時間で引き継ぎができると言うことは、それだけ授業の進行や運営について、専任非常勤を問わず教員間で共有が図られていることを表していると言えます。

日本でも代替教員のシステムはありますが、ある程度の期間の病欠や産休などに限られ、スポット的に入ってもらえるようなシステムはあまり聞いたことがありません。初任研などで授業に穴が開くような場合でも、専任教員で空いている誰かが入るか、自習になることが多いのではないでしょうか。

参観を終えて帰りに校庭を歩いていたら、前日に参観した授業にいた生徒のひとりが走り寄ってきて、飛びついてきてくれました。

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