ぼうっと恣意的なテレビの垂れ流しを観て、「ふ〜ん、アベもいいことあるじゃん」なんてミジンコの鼻くそ程度にも感じた人は、これを読んでから投票先を決めてください。
有料記事ですが、引用します:
「(ファクトチェック)首相、参院選で誇る『実績』」
安倍晋三首相の発言
参院選は政権運営のありようや政策の達成度に評価を下す機会だ。安倍晋三首相は全国各地での街頭演説で、様々な数字を示して政権の「実績」を強調している。とりわけ繰り返している数字を検証してみた。
■「雇用380万人増、年金の支え手も増えた」 年金加入者は横ばい
総務省の労働力調査(年平均ベース)によると、企業や団体などに雇われている雇用者のうち役員を除いた働き手は、第2次安倍政権発足後の2013年から18年までの6年間で383万人増えた。「380万人増」という主張は正しい。
ただ、増えた働き手のうち55%はパートやアルバイトなど非正規で働く人々が占める。非正規で働く人の多くは所得が少なく、不安定な生活を送っている。首相はこれまで「この国から非正規という言葉を一掃する」と訴えてきたが、役員を除いた働き手に占める非正規雇用の割合は18年平均で37・9%となり、過去最高の水準になっている。
一方、年金の支え手である加入者数は、保険料の納付期間が終了して加入者でなくなる人と新規加入者を出し入れすると、12年度末が6736万人、17年度末が6733万人で、ほぼ横ばいだ。「年金の支え手が400万人近く増えた」かどうかははっきりしない。
保険料収入は確かに増加傾向にある。17年度は37兆2687億円で、12年度より7兆1千億円増えた。厚生労働省は理由の一つに、国民年金に比べて保険料が高い厚生年金の加入者が増えたことを挙げる。
年金の種類別にみると、自営業者や無職の人らが入る国民年金の加入者は12年度末から17年度末の間に449万人減り、会社員が対象の厚生年金の加入者は446万人増えている。厚労省は「厚生年金の適用拡大や、雇用状況の改善に伴う国民年金から厚生年金への移行などが影響している」と分析する。
また、厚生年金の保険料(労使折半)を上限の18・3%まで段階的に引き上げてきたことも保険料収入の増加につながっているという。働く人が増えたことだけを保険料の収入増の理由に挙げるのは不正確だ。
首相は演説で「4月に年金額が増えた」ともアピールする。19年度は公的年金の支給額が前年度より0・1%引き上げられた。引き上げは、15年度以来4年ぶり。国民年金の場合、満額で受け取る人は月67円増えて6万5008円、厚生年金はモデル世帯(夫婦2人分)で月227円増の22万1504円となった。
ただ、少子高齢化に合わせて年金水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」により、物価上昇率(1・0%)や賃金上昇率(0・6%)よりも支給額の伸び率が抑えられている。だから支給額は増えても、実質的な水準は目減りしている。(内山修、山本恭介)
■「介護士の皆さんの待遇、改善した」 月5万1000円増、説明不足
安倍政権は2020年代初頭の「介護離職ゼロ」と、20年度末の「待機児童ゼロ」を目標に掲げる。実現には施設整備と合わせ、介護職員と保育士の不足を解消することが欠かせないため、処遇改善に取り組んでいる。
17年調査では、介護職員の平均給与(賞与を含む)は月額27万4千円。全産業平均より9万2千円少ない。介護従事者処遇状況等調査によると、09~17年度の介護報酬改定などに伴い、一定要件を満たした事業所で常勤の介護職員の平均給与(同)は月額で計5万7千円増えた。
このうち6千円分は民主党政権時代(09~12年度)で、首相の言う「5万1千円」は5万7千円から6千円を引いた金額だ。ただ、09年度に麻生政権下で決定した増額分2万4千円が含まれており、第2次安倍政権発足以降の増額分は2万7千円にとどまる。待遇が改善した期間を明示しないのは説明不足だ。
今年10月からは新しい加算も始まる。昇進制度の整備など一定の要件を満たした事業所を対象に、経験10年以上の介護福祉士のうち少なくとも1人の賃金を月額8万円以上増やす。
保育士の昨年6月の平均月給は23万9300円(賞与などを含まない)で、全産業を約10万円下回る。
私立保育園の保育士の給与は各園が独自に決めるが、国は目安の給与を示している。内閣府によると、賞与や処遇改善の加算分を含めた今年度の目安の給与は、12年度に比べて約4万1千円増えた。首相が言う「4万1千円」はこれを指す。ただ、このうち約2万2千円分は人事院勧告を受けた国家公務員の給与改定に準じて増えたものだ。
「4万円上乗せ」は17年度に始まった。保育士経験がおおむね7年以上の副主任らが対象だが、1施設につき保育士数の3分の1程度と上限が決められている。介護福祉士の「8万円上乗せ」と同様に対象者は限定的で、丁寧な説明が必要になる。(石川春菜、浜田知宏)
■「生産農業所得、この19年間で最高」 生産減り単価上昇の指摘
農林水産省の統計によると、最新データである2017年の生産農業所得は3兆7616億円。3年連続の増加で、1998年(4兆440億円)以来の高額だった。09年に2兆5946億円まで落ち込んだことを考えると、農家の所得が大きく回復してきたのは事実だ。ただ、政権の実績としては評価が分かれる。
今年3月の農水省の審議会。首相と同様に「所得増加」を強調した農業白書の骨子に対し、全国農業協同組合中央会の中家徹会長は「このことで農業が強くなっているのかといえば、そうではないのでは。生産量が減少して単価が上がり、金額が伸びたのではないか」と異論を唱えた。
主要作物の18年産の収穫量を政権交代前の12年産と比べてみると、コメや小麦、大麦は1割ほど減った。一方、18年度の消費者物価指数の生鮮食品は、6年前より22%も上がった。
過疎地が支える農業は人口減の直撃を受ける。18年の耕地面積は、6年前より13万ヘクタール狭い442万ヘクタール。神奈川県の半分が減った計算だ。農業所得の増加は、弱い農家が生き残れないことの裏返しとも言える。消費者にとっては、生産量が減って価格が上がるというマイナス面が際立つ。
「輸出額9千億円」は誤解を招く。18年に過去最高の9068億円だったのは「農林水産物」の額。農産物だけなら5661億円にとどまる。(大日向寛文)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14097755.html?fbclid=IwAR21zlOV-wgxubmeo1p3B42nz4wJIDPoRepXhMufuzEXo9-HKY9astI29No