どんな外国語でも、頭の中で訳していてはダメ、とはよく言われますが、その弊害がもっとも顕著に出るのが数字かもしれません。どんな外国語であれ、数字というのは感覚としてすんなり理解できるようになるまでには相当時間がかかると思います。
列車内のアナウンスなどでも、ホームの番号や発車時刻、食堂車の案内など、数字部分で引っかかり、ちょっとでも頭の中に母語が介入すると、次の情報を聞き損ねます。電話番号を聞き取ってメモするときなども同様です。
フィンランド語の基本的な数字はこんな感じです。読み方は、大雑把に言えば、yは「ウ」、jは「ユ」、äは英語のaとほぼ同じ、他はほぼローマ字と同じと思って読めばだいたい合っているはずです。
1〜10 | 11〜20 | 30〜100 |
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yksi(ウクスィ) | yksitoista | |
kaksi(カクスィ) | kaksitoista | |
kolme(コルメ) | kolmetoista | kolmekymmentä |
neljä(ネリヤ) | neljätoista | neljäkymmentä |
viisi(ヴィイスィ) | viisitoista | viisikymmentä |
kuusi(クウスィ) | kuusitoista | kuusikymmentä |
seitsemän(セイッツェマン) | seitsemäntoista | seitsemänkymmentä |
kahdesksan(カフデクサン) | kahdesksantoista | kahdeksankymmentä |
yhdeksän(ウフデクサン) | yhdesksäntoista | yhdeksänkymmentä |
kymmenen(クンメネン) | kaksikymmentä | sata |
1〜4あたりが紛らわしいという人もいますが、私は8と9が混ざってしまいます。
ということをかつて授業中のペア練習中で相手に言ったら、彼も同じ悩みを抱えていたことがあるらしく、こういう覚え方もあるよと彼が教えてくれたのは、
10(kymmenen)−1(yksi)=9(yhdeksän)
10(kymmenen)−2(kaksi)=8(kahdeksan)
成り立ちが10の余剰系と関係があるのかどうか真偽はわかりませんが、なるほど、学習者というのは苦し紛れにいろいろ考え出すものです。
私の場合は、愛聴しているラジオ局FUN Tampere(89.0MHz)のコールサインで覚えればいいと気づきました(このネットラジオ、日本から聞けるかなぁ)。
89は本来はkahdeksankymmentä yhdeksänあるいはkahdeksan-yhdeksänと言いますが、実際のラジオ局のコールでは”kasi-ysi pisten nolla”と言っています。pistenはpoint、nollaはzeroというのはわかったのですが、kasi-ysiの部分がどうしても聞き取れず(というか理解できず)、当時受講していた授業の先生に下のをそのまま真似て再現したら、ああ、それはね…と教えてくれました。
Tämä on FUN Tampere, kasi-ysi pisten nolla, eniten musiikia.
というわけで、89.0という周波数さえ忘れなければ、89はkasi-ysiなので、8がkasi→kahdeksan、9がysi→yhdeksänとなります。
数字については、こんなに長い語で困らないのかなと不思議に思っていました。地元タンペレフィルハーモニックオーケストラの無料公開練習を見に行ったときのこと、指揮者が指示を出すとき、”y-ka-ko”と言っていたのを耳にして、ホッとしました。日本語の「いち、に、さん」あるいは「ひ、ふ、み」に相当するような短縮版もあるんですね。